谷埋め盛土とは    

丘陵地を宅地造成する場合、起伏ある地形を切り盛りし平坦にすることが一般的で、以前の谷部は盛土されます。盛土部分は、充分な締め固めが施され排水施設が機能していれば特に問題とならないのですが、締め固めが不十分で排水機能が低下すると軟弱な地盤となります。
その結果、地下に軟弱地盤が隠れることとなり、大きな地震の際にこのような“谷埋め盛土”が滑動したり側方流動する現象が現れます。


宅地造成等規制法が施行(昭和36年)される以前の造成地だけでなく、それ以降の造成地でも“谷埋め盛土”部分には注意が必要です。全国には13,000箇所の大規模盛土造成地があると言われていますが、それ以外にも数多くの“谷埋め盛土”は存在します。

地震時に谷埋め盛土が滑動・変形し重大な被害を出すということは、地震が多発する最近になってようやくわかったことなのです。この状態を放置すれば、震度6以上の地震が発生する度に甚大な被害が発生することは必至です。

これを防ぐためには、まずご自分の宅地はどういう地盤でできているのか?地震の時に滑動・変形する危険性が大きいのか小さいのか?ということを知ることが必要です。
そして、危険性が大きいと判定されたら、適切な対策を行って危険性を小さくしておかなければ、貴重な家族の生命と財産を守れません。


谷埋め盛土の地震時滑動・変形(改正宅造法では「滑動崩落現象」と呼んでいる)は、地震→締まりが緩く飽和地下水がある箇所の過剰間隙水圧上昇(液状化のようなもの)→摩擦抵抗の消失→低角度でも滑動→水圧低下→滑動停止、という順で起きることがわかっています。
盛土底面が液状化してしまえば、液体と同様なので摩擦抵抗は期待できなくなり、非常に低角度であっても滑っていきます。
しかしすべての谷埋め盛土が滑動・変形するわけではありません。

釜井俊孝博士の研究によれば、盛土の幅が、盛土の深さの10倍を超える横断形状(盛土の幅÷盛土の深さ>10)となっていると変動しやすいことがわかっています。そのほかにもいろいろ要因はあり専門家の鑑定が必要ですが、この幅÷深さの関係が地震時の谷埋め盛土の変動危険性に対して最も重要な役割を果たしています。
1995年1月17日の兵庫県南部地震以降、大きな地震の揺れ(震度6以上)で宅地谷埋め盛土が横方向に滑動し地盤が変形する災害が起き、2004年10月23日の新潟県中越地震での被害を契機に、国も宅地造成等規制法を改正し、「宅地耐震化推進事業」が着手されました。