登記法改正によって 平成17年3月7日の新法施行により全ての登記所で、次のような手続きに変更されました  

今まで大きな違いは、「保証書制度」が廃止され「事前通知制度」、「司法書士等の資格者代理人による本人確認情報の提供制度」が導入されたjことです。 詳細は司法書士会やその他の広報でお調べいただくか、ご不明な点はお尋ね下さい。不動産は登記をすることにより第三者への対抗要件となりますので概要は押さえておきたいものです。


1.事前通知制度 『「権利証」がない・・・再発行してもらえる?』

権利証の再発行はできません。ただ権利証がないと登記ができない、という訳ではありません。
従前は、これに代わるものとして保証書を作成し登記申請をしていました。しかしこの保証書は不正な登記事案にしばしば利用されるなど問題点がかねてから指摘されていました。そこで今回の不動産登記法の改正に伴い保証書制度は廃止され、より充実させた (1)「事前通知制度」と (2)「司法書士等の資格者代理人による本人確認情報の提供制度」が新たに導入されました。


① 「事前通知制度」
 
この制度では、売主等登記義務者に対して、郵送で「登記申請があった旨」の通知が行われます。通知を受け取った不動産登記名義人が、これに記名し実印で押印して、通知された登記の申請が真実であることを登記所に申し出たときに初めて登記が実行されます。この通知は「本人限定受取郵便」によってされ、これにより本人確認が行なわれます。このように、「事前通知制度」によって、本人確認が行なわれた上で、登記が実行されることになります。 

②「司法書士等の資格者代理人による本人確認情報の提供制度」 
「登記識別情報」も「権利証」も提供できない場合、原則として(1)の事前通知により登記がなされることになりますが、事前通知を省略して登記申請できる方法がこの制度です。
具体的には、申請代理人である司法書士が本人と面談して、さらに、たとえば本人のパスポートや運転免許証等の身分証明書の提示を受けて本人であることを確認し、その面談日時・場所、所定の確認方法による本人確認をした旨等、司法書士がその責任において本人確認をしたことを明らかにした上で、その内容を本人確認情報として、登記所に提供するというものです。
この場合は、その本人確認情報が適正であれば、事前通知を省略して登記が実行されます。たとえば、不動産売買の場合、売主は、司法書士と面談し、運転免許証等を提示し、本人確認情報を司法書士が作成できるようにした上で、その他の必要書類と引き換えに、取引決済が円滑にすすめられます。
ただし、司法書士が適正な本人確認情報を提供できない場合は、この制度を利用することはできません。その時は、原則どおり、事前通知による登記となります。


2.必要書類が変わります(登記原因証明情報)
これまでも、売買契約書や抵当権設定契約証書、抵当権解除証書などの 登記の原因を証する書面、いわゆる「登記原因証書」の添付は要求されていました。しかし、この「登記原因証書」がない場合には、「申請書副本」(「登記申請書」と全く同様の書面)を添付することで登記申請が可能でした。
そのため、これまでは、登記の原因を証する書面がなくても、「申請書副本」を添付することで登記を行なうことができました。


①『登記原因証明情報』の必要的添付 
新法施行後は、「申請書副本」添付による登記申請は廃止され、これまでの「登記原因証書」に代えて「申請書副本」を提出していた登記についても「登記原因証明情報」(登記の原因及びこれによる物権変動の存在を証明する情報)の提供が原則として必要的となります。
具体的には、売買であれば、「売買契約書・領収書」、登記所用に作成した「証明書」、抵当権設定では「抵当権設定契約書」、抵当権抹消では、「解除証書」等で、これらの書面には当事者の署名又は記名押印が必要となります。


②実務上のポイント
この「登記原因証明情報」の提供は、新法施行と同時に全ての登記所で、必要となります。
今後は、取引の際には必ず「登記原因証明情報」となる書面に、当事者の署名又は記名押印をいただくことになります。これまでは、申請書副本でも登記申請ができましたので、売主等登記義務者は、権利証を持参して、司法書士宛の登記申請委任状に署名又は記名押印することで、登記申請が可能でした。
しかし、新法施行後は、委任状への押印のみでは足りず、「登記原因証明情報」への署名又は記名押印が必要となります。


3.オンライン申請の開始
オンライン申請は、法務大臣の指定を受けた登記所から順次適用となります。指定がない登記所へは、オンライン申請はできません。また、オンライン指定庁となった後でも、書面申請は可能です。

4.「権利証」から「登記識別情報」へ
「保証書」廃止や「登記原因証明情報」の必要的提出は平成17年3月7日の新法施行と同時に全ての登記所で適用となりますが、登記識別情報への移行は、オンライン指定庁から順次適用されます。指定がない登記所への申請では、今までと同様に、登記完了後、登記済証(権利証)が発行され、それをその後の登記申請で使います

①「権利証」がなくなる?
これまでは、登記が完了すると、不動産の権利を取得した人には登記済証(登記所の印鑑を押した書類)が交付されていました。これが、いわゆる「権利証」です。
いままでは、権利証を「持っている」ことが、不動産の権利者としての確認資料のひとつでした。つまり、不動産を売却したり、担保に入れたりする場合には、この「権利証」を登記所に提出することが必要だったのです。しかし、オンライン申請による場合、これまでの「権利証」は、登記が完了しても交付されないこととなりました。


② 「権利証」に代わり『登記識別情報』
今後は、登記が完了すると、買主等の登記名義人に『登記識別情報』が通知されることになります。登記識別情報とは、登記所が無作為に選んだ「12桁の英数字(AからZまでおよび0から9まで)」です。
現在、キャッシュカードやクレジットカードで使っている、「暗証番号」が長くなったものと同じように考えていただければわかりやすいでしょう。
これからは、この番号を「知っていること」が、不動産の権利者としての確認資料のひとつになります。つまり、不動産を売却したり担保に入れたりする場合には、不動産ごと、権利者ごとに発行されるこの『登記識別情報』と呼ばれる「12桁の英数字」を登記所に提供することが原則となります。


③今持っている「権利証」はどうなる?
現在発行されている「権利証」は、使えなくなるわけではありません。オンライン指定庁となった後は、登記済証(権利証)は発行されず、登記識別情報が通知されます。それを次の登記申請で使うことが原則となるというだけであり、今後も、すでに発行されている「権利証」と、オンライン指定庁になるまでの間に発行される「権利証」は、書面でする登記申請の際に提出することが原則となります。

5.対応は
①移行の時期 
前述のとおりの「登記済証(権利証)の発行」から「登記識別情報の通知」への移行は、「オンライン指定庁」から順次開始されます。新法施行後も、オンライン指定庁となるまでは、これまでと同様に権利証が発行されます。売主等の登記義務者が以前に登記を受けた時点が、オンライン指定庁となる前だったのか、オンライン指定庁となった後なのかによって、準備する書面にも違いが生じますのでご注意下さい。

②登記識別情報の管理の徹底
これまでは、権利証そのものを大事に保管していれば、他人に悪用される可能性は低く、ひとまず安心でした。これに対し、登記識別情報は、これを知っている人がその不動産の権利者と見られてしまいます。つまり、一度他人に登記識別情報を知られることだけで、悪用されてしまう危険性が生じてしまいます。登記識別情報は「書いてある紙を人に渡さない」のみならず「人には見られない」「教えない」といった厳重な管理が必要となってくるのです。
登記識別情報も、他人には「見せない・教えない・渡さない」よう、管理の徹底が必要です。もしうっかり他人に見られてしまい、悪用されてしまう危険性が生じた場合には、登記識別情報そのものを失効させる制度があります。 また、登記識別情報の管理をしたくないという方のために、登記識別情報をはじめから登記所から通知しないことを求めることも可能です。