1.隣地のがけ崩れによる売主の責任 大阪地裁 平成13年2月14日  
 
概 要
売主が所有しその後売却した土地は、売主所有の「がけ地」に隣接していた。S58年及びH5年にがけ崩れ被害が発生したため、H6年に売主は可能な範囲で「がけ」の防災工事を施していた。
H9年に売主は中古住宅付のこの物件を買主に売却したが、その際に売主は、近隣の土地が「がけ崩れ危険地域」に指定されていること、H6年に施工した対策工事の概要を説明したものの、買主に対して具体的な危険性についての説明は行わなかった。
その約6ヶ月後に発生したがけ崩れによって、買主一家が亡くなったため、相続人が売主に対して不法行為による損害賠償請求(2億6000万円余)の訴えを提起したものです。
裁判所の判断
販売する土地・住宅について、がけ崩れの発生により居住者の生命、身体、財産に被害が及ぶ可能性のあることが客観的に予測可能な場合には、売主は充分な防災工事を行い、安全を確保する義務を負う。売主が施した防災工事は最低限の安全性を確保する上でも十分でない。売主の安全確保義務違反による不法行為責任を免れない。
教 訓
がけ崩れが起こるかを予測することは難しいことを理解し、十分な調査・対策を行う。又、対策工は維持管理まで考えて行う必要があります。 売主は、物件を安全に引渡す義務があり、買主も「がけ」や「擁壁」の安全に不安がある場合は専門家に相談し、場合によっては調査や対策を売主に要請することも必要です。( もちろん、その物件をどうしても手に入れた場合ですが)