2.宅地の耐震性が具備されるとした判例 仙台高裁 平成12年10月25日  
 
概 要
仙台市がS42からS45にかけて造成した団地で、S53に発生した宮城県沖地震により、宅地地盤の亀裂、沈下、隆起等の被害、住宅の基礎、壁面の損傷等の被害が発生した。S44からS46にかけて分譲を受けた被告らが、市の売主としての瑕疵担保責任に基づく損害賠償を請求する訴えを提起したものです。
裁判所の判断
一審では、耐震性の面から見た宅地の瑕疵の有無の判断基準として3つの基準を示した。
①その地域で発生することが経験上予測可能な規模の地震に対する、耐震性の具備
②発生することが経験上予測可能な規模を超える地震に対する、耐震性を具備するための一般的な基準、又は経験則の有無
③造成工事施工時における通常の技術基準適合性
一審では、①について地震強度は震度6と認められ、被災地で経験予測上可能な規模の地震強度である震度5を超えるものであった。又、②③の観点からも耐震性の面から見た宅地の瑕疵は存在しないとして、訴えを退けた。

これに対し控訴審は、次のように述べて売主の瑕疵担保責任を認め損害賠償を容認した。
●耐震性の面から見た宅地の瑕疵の有無の判断基準として、その地域で発生することが経験上予測可能な規模の地震に対する、耐震性を具備することが要求されるとして、被災地の地震強度は経験上予測可能な震度5であったと認められ、それにもかかわらず被害が発生した宅地は、通常有すべき耐震性を具備していない。
教 訓
宅地の地震による滑動や崩落などは、これまで売主の瑕疵担保責任を問えることは無かった。今回の判決は宅地造成業者にとっては非常に困ったことになる。耐震性を具備しているかどうか、その地域で発生することが経験上予測可能な震度とはどの程度かなどは、現在の基準や経験則ではなかなか判断できない。予測可能な期間とはどれくらいなのかははっきりしていないし、例えば東海地震では震度6強を想定して造成しなければならないか。
消費者として可能なことは、その宅地造成地がどのような施工がなされたかを知ることで、最低でも切土なのか盛土なのかは知っておくことが必要です。